英借文から始めて自力で英作文ができるようになる方法
「英語のビジネスメールをすらすら書きたい」と思っている方に、ひとつの方法として『英借文』とその使い方をご紹介します。『英借文』とは、他から英文表現を借りて自分なりの英文を書く手法のことです。
英借文とは
「英作文は英借文」こんなフレーズを聞いたことはないでしょうか? 『英借文』とは、他から英文表現を借りて自分なりの英文を書く手法のことです。
英作文を書く時によく使われる手法で、ネイティブがよく使う表現や定型文をストックしておき、それを元にして自分の伝えたい英文を作成します。比較的決まった型やフレーズを使うビジネスメール・技術論文で特に有効な英語ライティング手法です。
英借文を使うメリット
では実際に英借文のメリットを見ていきましょう。
- ネイティブが使う自然な英語に近づける
- 英語を書くスピードが段違いに早くなる
- 英語を正確に書くことができる
- 英語を読むスピードが早くなる
- 英語を書くコツを掴んで最終的に自力で英作文できるようになる
ネイティブが使う自然な英語に近づける
ネイティブがよく使う表現を借りてくるわけですから、当然その英文はネイティブらしい自然なものとなります。日本語を元に英語を書いた時の、文法上は間違ってないんだけど違和感がある英文を書くことを回避できます。
一つ具体例を出しましょう。 「私の理想の恋人像について話したいと思います」を英文にしてみましょう。
I am going to talk about my ideal lover’s image.
日本人が英語化すると、上記のようになりがちです。現時点 (2019年10月) でGoogle翻訳にかけても同じ英文になります。文法的に間違ってはいないし意味も理解できるんですが、少し違和感がある英文というやつです。
これをネイティブに人が書くと、
I am going to talk about what I would imagine as an ideal lover.
となることが多いです。about以下の表現に違いがあります。
このようなネイティブが良く使う表現を、フレーズをまるごと借りてくれば、違和感のない自然な英文が書けます。
ただ、1点注意点があります。英語はネイティブに人とコミュニケーションを取るときだけ使うものではありません。非ネイティブ同士で英語を共通語としてコミュニケーションを取る際にも使います。その際に、あまりにこなれたネイティブっぽい表現のフレーズを借りてくると、自分の意思と意図をうまく伝えられない場合があります。借りてくるフレーズは、ネイティブが良く使うけどシンプルなものにした方が良いでしょう。
英語を書くスピードが段違いに早くなる
もうすでにある英語のフレーズを借りてくるわけですから、一から書くよりも段違いに早く書けます。英文まるごと借りてくるのが一番早いですが、覚える文が膨大になりすぎることから、フレーズ単位で借りてきてその中の単語を必要に応じて入れ替えるやり方をする方が現実的でしょう。
英語を正確に書くことができる
ビジネスメールでは正確に書くことがなにより大切です。正確に書くことで、誤解を避けてトラブルを防止するとともに、きちんと正確な英文を書くことで相手に信頼されるようになるからです。そのことはビジネスをスムーズにします。
正確じゃないとで言っても色々です。単純なスペルミスは当然してはいけないですが、最も気をつけたいことは、その気がなくても失礼な言い回しを使ってしまって、相手に嫌な気持ちにさせてしまうことです。
例えば、日本人は「Please」をつければ丁寧語になると思いがちですが、 Please send the document. は、取引先や上司には使ってはいけない表現のひとつです。ものすごく上から目線で命令しているような感じになったりします。 Could you send the document? の方が状況に合った正確な英文でしょう。
この「状況に合っている」という意味も含めて正確な英語を書かないと、ビジネスシーンでスムーズなコミュニケーションは難しいでしょう。状況も含めて英借文をすることにより、そのような失敗を未然に防ぐことができます。
英語を読むスピードが早くなる
よく使われる英文フレーズを、英借文の部品としてストックしていくしていくと、英文フレーズが自然と自分の頭の中にもストックされていきます。
頭の中にストックされる英文フレーズが増えてくると、まず英語の読み方が変わります。今までは1語ずつ単語単位で読んでいたのが、フレーズという塊の単位で読むようになります。このように読み方を変えることで、英語を読むスピードはかなり早くなります。
その加え、英文フレーズを使い慣れていると、フレーズを全部読むことなく、見た瞬間 のビジョンだけで、英文の意味を理解できるようになります。この状態がいわゆる「英語を英語のまま理解する」というやつです。
「英語を英語のまま理解する」というのがいまいちわからなかった人は、その前提となるフレーズを使いこなすためのストックがない人が多いです。英文フレーズの頭の中のストックが増えて、それに熟練していくと英文をフレーズ単位で読むようになります。そうすることで初めて「英語を英語のまま理解する」ことができるようになるのです。
フレーズという塊ごと、瞬間的に理解するようにして英文が読めるようになれば、読むスピードが、それをしなかった時に比べて格段に早くなるでしょう。読むスピードが早くなれば、大量の英文を読むことが可能になります。そしてその大量の英文の読み込みにより新しいフレーズも入ってきます。英文フレーズのストックがさらに増え、それがさらに英文を読むスピードを向上させるという良循環が生まれます。
その良循環を生み出す最初のきっかけになるのが『英借文』なのです。
英語を書くコツを掴んで最終的に自力で英作文できるようになる
英借文を始めることによって以下の良循環がはじまります
- ネイティブが良く使う英語のフレーズのストックが貯まる
- ストックを使って英語を書くことで、英文を書くスピードが向上する
- 書くスピードが向上することにより、たくさんの英文が書けるようになる
- たくさんの英文を書くことにより、英語フレーズに慣れるようになる
- 英語フレーズに慣れることにより、英語を読むスピードが向上する
- 英語を読むスピードが向上することにより、新しい英語フレーズがどんどん貯まる
- 新しい英語フレーズがどんどん貯まることにより、英文を書くスピードがより向上する
- 英文を書くスピードが大幅に早くなることで、いままでと段違いの量の英文を書けるようになる
- 大量の英文を書くことにより、英語フレーズのストックが頭の中に定着して、頭の外のストックを使わないで自力で英文を書けるようになる
ここまで英語の基礎力を身に着けた後は、ストックされた英文フレーズを核として、主語・名詞・動詞などをその時の適切なものに変えていくのです。後は適切な語彙を追加していくだけで、英文を自力で書く能力はどんどん伸びていくでしょう。
英借文の具体的なやり方
英借文のメリットがわかった後は、具体的なやり方を見ていきましょう。
- 最初に、まるごと英文のフレーズを借りてくることから始める
- 借りてきたフレーズの単語 (目的語や補語など) を入れ替えることで、表現の幅を広げる
- 複数のフレーズ借りてきて、そのフレーズを組み合わせる
- 必要なときだけ最適なフレーズだけを借りてきて、あとは自分で英作文する
英借文をするときは、最初は文まるごとをストックしていきますが、慣れてきたらフレーズ単位でストックしていくと使い勝手が良くなります。また単語 (目的語や補語など) 置き換えられるようにストックされていると更に便利です。
上記の手順を踏むことで、
最低限正しい (理解してもらえる) 英文が書ける ヴァリエーションに富んだ英文が書ける 洗練された英文が書けるようになる と、英文を書く能力が上達していくでしょう。
英文を借りてくる場所
元となる英文を借りてくる場所は慎重に選択しましょう。英文フレーズを借りる場所を間違えると、当然、それを借りて作る自分の英文も間違ったものになるからです。英語のビジネスメールを書くにあたり、英文の借り先として下記の場所をおすすめします。
- 信頼できる人から受け取った英語のビジネスメール
- 過去に自分が書いた検証済の英語のビジネスメール
- 書籍 (英語のビジネスメール用の例文集)
- 対訳コーパス
- 翻訳ネットサービス
信頼できる人から受け取った英語のビジネスメール
ネイティブ・非ネイティブに関わらず、英語に関する深い理解度を持ち、相手を思いやることのできる人から来た英語のビジネスメールほど理想的な借り先はありません。実際にビジネスシーンで使われている第一級の資料になります。
来たメールを読んで、良いなと思った言い回しやフレーズはどんどんストックしていきましょう。
過去に自分が書いた検証済の英語のビジネスメール
過去に自分で書いた英語のビジネスメールも優れた借り先です。ビジネスメールを書くときに時間をかけて、これで良いかと十分検証したはずです。その検証済みの英文を1回だけで使い捨てしてしまうのはもったいないです。
自分の過去の送信メールを掘り起こして、再利用できるフレーズがあったらどんどんストックしていきましょう。
書籍 (英語のビジネスメール用の例文集)
本屋さんの英語コーナーに行くと「英文ビジネスEメール 実例1200」のような書籍がたくさん並んでいると思います。出版するというフィルターを通してあるものですから十分信頼できる内容となっています。
使う状況ごとに分類されていて、デジタルデータがあるもの (CD-ROM付など) を2冊ほど手元にあれば英文フレーズの優れた借り先となります。通販で購入するのはおすすめできません。本屋さんなどで実際に中身を見て、自分にとって使いやすいものか確認した後に購入したいと、実際の借り先として使えないものを購入してしまう恐れがあります。
対訳コーパス
対訳コーパスとは、言語学における研究や自然言語処理における機械翻訳の学習データとして利用するためなどに構築された、異なる言語の文と文が対訳の形でまとめられたコーパスのことです。
コーパスとは、テキストや発話を大規模に集めてデータベース化した言語資料のことです。
信頼できる対訳コーパスを使えば、英文フレーズの借り先として申し分ないでしょう。特に、検索エンジン付きで対訳コーパスをWebサービスとして提供しているものは、ものすごく便利な借り先となります。日本語で検索をかけて対応する英文を探せることで、最も手軽に幅広く英文フレーズを借りてくることができるでしょう。有名なネットでの対訳サービスは下記になります。
翻訳アプリケーション
コンピューターに自動で翻訳させる「機械翻訳」の精度は近年ものすごい向上しています。現時点 (2019年10月) では、全面的に信頼までするに至っていませんが、今後精度の向上により、信頼度も高まっていくでしょう。現時点でも、英借文の借り先として補助的に使うのであれば十分な精度を持っています。下記が有名なネットサービスになります。
英借文から始めると最後には自力で英文が書けるようになる理由
「英語が書けない人が、英語が書けるようになるためには、英語を書かないといけない」というパラドックスを解決する方法として、英借文をとっかかりにする方法は極めて有効です。英借文を使うことで、英語を使うことに慣れることができるからです。
英語を上手に使えるようにするために必要なことは、初期の文法理解を除けば勉強ではありません。スポーツのように実際に英語をどんどん使って慣れていくことです。
そして、英語を習得することを一番阻害することは、英語を使わないことです。
幼少期より特に意識しないで身につけられた母国語と違って、物心ついてから新しい言語を覚えることは大変です。言葉を使って意思を伝達したり、相手の意思を理解することに対して、母国語という絶対的に強いライバルがいるからです。
誰もが母国語を使う方が、いまいちな第二言語を使うよりも快適です。逆言うと母国語を使わないで、第二言語を使うことは快適ではないのです。なので、第二言語を使うことを避けようとします。これが第二言語を習得できないメカニズムです。
第二言語を使うことの不快さをいかに軽減するかが肝になります。ここでは第二言語を使うことの不快さをなるべく減らす方法のひとつとして、英借文を使う方法をご紹介しています。
「英語を自由にストレスなく読み書きできるようにないたい」そんな願いを持つ人は、英借文から始めるのはいかがでしょうか。